キスダムRが再放送やBDBOX発売というので、新規の人にも興味を持ってもらうために一体どういうアニメなのか紹介してみようと思う

1 キスダムってどういうアニメ?

 キスダムRが再放送でBDBOX発売(挨拶)。
 
 取り敢えず情報がまとまっているGigazineの記事をば。
 ほぼ幻と化していたアニメ「キスダムR-ENGAGE planet-」がBS11で再放送決定、BD化への動きも - GIGAZINE
 ここがやたらキスダムについてアツイ理由は一体何僕楽考。
 
 キスダムについてはR放送開始前にも書いたのだが、
 2008-04-26 - 理想と幸福と
 書き足りないこともあったのでもう一度。
 主にキスダムとは何かを知らない人に向けて
 キスダムに興味を持ってもらえるように紹介したいと思う。
 
 キスダムというアニメの概要はネタバレが溢れているので
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%ad%e3%82%b9%e3%83%80%e3%83%a0/
 とか
 http://ansaikuropedia.org/wiki/%e3%82%ad%e3%82%b9%e3%83%80%e3%83%a0/
 は初めは見ないほうがいいかもしれない。
 問答無用でネタバレされるのは公式も変わらない。
 
 まずはネタバレをなるたけ抑えて紹介を行う。
 物語の骨子は、メインヒロインを取り戻すために
 主人公達が人類の敵ハーディアンと戦うというもの。
 まずは、それを作り出すスタッフや、
 キャラとそれを演じるキャストの紹介に留める。

2 スタッフ

 キスダムには以下の様に
 素晴らしいスタッフ達が参加している。
 アニメを観る前からこの作品が醸しだすオーラを
 感じ取ってもらえたら幸いだ。
 名前の箇所のリンクはWikipediaへ。
 
 総監督・シリーズ構成:長岡康史
 『星界の紋章』『星界の戦旗』『神魂合体ゴーダンナー!!』などの監督。
 名作と名高いアダルトゲーム『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の
 キャラクターデザイン・原画でもある。
 最近では『スーパーロボット大戦OG -ジ・インスペクター-』で
 絵コンテや原画を務めた。
 
 監督 佐藤英一
 『地球少女アルジュナ』副監督、『バスカッシュ』スーパーバイザー→監督など。
 最近は大ヒット作『マクロスF』の劇場版第二弾『サヨナラノツバサ』の副監督を務める。
 
 副監督 神戸 洋行
 『最終兵器彼女』のメカデザインとメカ監修、
 『忍空』『マキバオー』『烈火の炎』で作画監督を務め、
 『風の聖痕』『ロザリオとバンパイア』でデザインワークの任に就いた。
 最近はアニメも大ヒット進行中『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』監督で活躍中。
 
 キャラクターデザイン:すしお
 ガイナックスに所属する有名人気アニメーター。
 ガイナックスだけでなく東映アニメーションの作品でも数多くの原画を務める。
 『サクラ大戦 活動写真』や『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』、『天元突破グレンラガン』15話で作画監督
 
 
 メカニックデザイン河森正治
 いわずと知れた人気メカデザイナー
 『超時空要塞マクロス』『アーマード・コア シリーズ』
 『創聖のアクエリオン』などで有名。
 キスダムでも彼がデザインした様々なメカが活躍。
 中には変形したりと、非常に細かな設定を持つものも。
 その中の一つコクピットアーマーは
 河森氏本人も気に入っているデザインらしい。
 
 
 音楽:Ⅱ MIX⊿DELTA
 『名探偵コナン』『新機動戦記ガンダムW』等のOP曲を歌った
 TWO-MIXと、近藤真彦の『ミッドナイト・シャッフル』の作曲や、
 『ふしぎの海のナディア』の『ブルーウォーター』の編曲などを
 行ったジョー・リノイエが組んだユニット。
 キスダムのOP曲を1,2クールとも務めた。
 
 
 ED:ステファニー
 上記のジョー・リノイエ作曲でもある
 『機動戦士ガンダム00』のED『フレンズ』などで有名。
 5オクターブの歌姫とも呼ばれるほどの音域の広さは必聴。
 
 
 アニメーション制作:サテライト
 『創聖のアクエリオン』『ノエイン もうひとりの君へ』『HELLSING OVAシリーズ』等を手がけ、最近は『劇場版マクロスF〜サヨナラノツバサ〜』の制作を行った有名アニメスタジオ。

3 主要キャラとキャスト

 登場人物豊富なこのアニメだがキャストも
 若手や中堅の人気声優が多く大変豪華になっている。
 主なキャストだけでも紹介してみよう。
 
 哀羽 (アイバ) シュウ 小野 大輔
 主人公、NIDFという軍に所属。
 メインヒロインのために一途に戦い続けるという
 昨今珍しいやたら熱いヤツ。
 メカの操縦もすごい。
 
 『涼宮ハルヒの憂鬱』の古泉一樹や『デュラララ!!平和島静雄など。
 
 
 七生 愁 (ナナオ シュウ) 中村 悠一
 主人公と同じ名前の同僚。
 笑顔が素敵だと評判。
 
 『機動戦士ガンダム00グラハム・エーカー、『マクロスF早乙女アルトなど。
 
 近年は超が付くほどの人気声優二人の共演。
 丁度このころから人気に火が付いてきたようにも思える。
 またキスダムには女性レギュラーキャラも多い。
 
 流姫那 由乃 (ルキナ ユノ) 水樹 奈々
 メインヒロイン。
 研究職だけあって中々知的に振舞う。
 物語の鍵となる人物。
 
 『ハートキャッチプリキュアキュアブロッサムこと花咲つぼみなど。紅白出場歌手でもある。
 
 
 流姫那 乃亜 (ルキナ ノア) 遠藤 綾
 メインヒロイン由乃の妹。
 姉を求めて哀羽とともに旅を続ける。
 
 『マクロスFシェリル・ノームなど。
 
 
 ヴァルダ 明坂 聡美
 妖精さんその1。
 影のヒロインと言っても良いだろう。
 
 『探偵オペラミルキィホームズ』アルセーヌことアンリエット・ミステールなど。
 
 
 ヴァイレ 井口 裕香
 妖精さんその2。
 
 『とある魔術の禁書目録』インデックスなど。
 
 
 ヴァラール 渡辺 明乃
 妖精さんその3。
 
 
 イエラ 巴門 (イエラ ハモン) 渡辺 明乃
 乃亜の友人で戦闘系。
 コミカルさもあり場を和やかにしてくれる。
 
 『To LOVEる -とらぶる-』結城リトなど。
 
 
 ヒロインら女性陣もご覧の通り各々が
 主役ヒロインを飾れるほどの逸材ばかりである。
 他にも戸松遥さんがゲストキャラで出たりもする。
 すごい、すごいぞキスダム

4 さて

 素晴らしいスタッフに豪華なキャスト!
 カッコいいメカ!
 仲間達との熱い戦い!
 深遠な設定を持つ世界観!
 衝撃の展開の数々!
 女性キャラも沢山いるぞ!
 女のために戦う話という単純明快さ!
 
 キスダム、すごいアニメということが
 少しは分かっていただけただろうか。
 時間のある人はバンダイチャンネル一話を観て来て欲しい。
 やはり面白いと思ってくれて
 四月からの再放送を観てくれれば嬉しい。

5 キスダムは如何にして現在の地位を築いたか

 以下ネタバレ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 上ではあたかも一片の曇もない名作のように
 綴ったが、この作品はそんな単純なものではない。
 ネタアニメと笑われ、
 クソアニメと馬鹿にされ、
 しかしそれでも名作と誇れる、
 決して他の作品には真似の出来ない、
 そうした記憶に残るアニメなのである。
 以下管理人の記憶と感情を頼りに、
 当時の記憶を偏見を交えて掘り返しながら
 そうした雰囲気を伝えてみたいと思う。
 
 5-1.DVD発売延期
 5-2.放送開始直前から放送一月後までの波乱の展開
 5-3.河森メカの扱い
 5-4.裏返り
 5-5.OPEDの変遷
 5-6.「由乃オ(ry」「失格」
 5-7.にもかかわらず、いい話なのだ

5-1 DVD発売延期

    なぜBDBOX発売程度でこんなにも
    沸き立つのかと言うと、
    最大のポイントは以下である。
    「DVDシリーズ発売延期」
    これだけでは何か分からないかもしれないが、
    延期決定当時から予定日は明記されておらず
    事実上無期限延期となっており、
    現在にまで至っているのだ。
    
    深夜アニメとはそもそも
    「原作の宣伝・販売促進」または「DVDの販売」
    で利益を得るビジネスモデル(だとされている)。
    キスダムはオリジナルアニメであり、
    メディアミックスをしているわけでもないので
    DVDの発売は当然のことと思われた。
    にもかかわらず、発売されない!
    
    たしかにキスダムは残念ながら、
    いわゆる売れ筋のアニメでは決してない。
    たとえ発売したとしても製作委員会的に
    赤字は免れなかったかもしれない。
    しかし、しかし他の同じ境遇のアニメでも
    DVDは必ず発売されてきた。
    これはかなり大きく取り上げられ、
    それゆえに、この結末を迎えたキスダム
    大いに人々の記憶に刻まれた作品となってしまったのだ。
    

5-2 放送開始直前から放送一月後までの波乱の展開

    キスダムが衝撃を持って迎え入れられたのは
    何もアニメそのものの出来からだけではない。
    アニメ制作をとりまく状況そのものが、
    既に常識を逸したものであった。
    それは早くも放送開始後一月で
    広く知れ渡ったのだ……。
    
    放送開始前→監督が総監督・シリーズ構成
    更に監督、副監督の登用
    番組開始直前にこれである。
    何が起こったというのか……。
    この時は未だ、一部で話題になったにすぎず、
    さほど注目を集めたわけではなかった。
    
    第一節→お、けっこうおもしろいぞ。
    この段階ではそこそこの好評価を得ていた。
    
    第二節→なんか展開早いが、まぁこんなもんか。
    そう、ここまでは普通のアニメと変わらず
    スタッフの交代など視聴者達は忘れ去ってていた。
    この先何が起こるかなど知る由もなく……。
    
    第三節→もう何が何だか分からない。
    ライブ感溢れる作画
    ちぎれ飛ぶカット
    付いてこない音声
    一体何が起きているのか、誰も説明できない。
    マトモなアニメだと、とても呼べない代物だったのだ。
    そう、スタッフの交代劇とは、
    制作現場の惨状を示していたのだ……。
    
    第四話→総集編
    番組開始から一ヶ月経たずに総集編である。
    これからも制作現場の混乱ぶりが伺える。
    誰もが思ったに違いない。
    この先、どうなっていくのだろうかと。
    ちなみにこのアニメ、2クールなのである。
    まだ始まったばかりであった……。
    

5-3 河森メカの扱い

    マクロスアーマード・コアアクエリオンなど
    数々の作品でメカデザインを手がけてきた河森正治氏。
    キスダムでも凝ったメカをデザインしてくれた。
    
    それ自体が手足を持つ兵器となるコクピットアーマー、
    それが変形し二種のフライトユニットと合体することで
    高い機動力を持つ戦闘攻撃機ヴァイパーと
    陸海空で活躍出来る多用途攻撃機ドルフィンとに
    それぞれ使い分けることが出来るのだ。
    OPでも大々的にフィーチャーされており
    作中でも大活躍……と思われたが、
    ネクロダイバーや裏返りが生身で戦う超人アニメに。
    そのため河森メカはヤラレ役になってしまい、
    一部でネタにされることになったのだ……。
    

5-4 裏返り

    裏返り、それはキスダムを語る上では
    避けて通ることの出来ない要素である。
    
    要は「以前の仲間たちが敵となって襲いかかってくる」
    ということなのだが、彼らの言動が
    常人の及ばない領域に達していたため
    作品の混沌度上昇に非常に貢献した。
    特にロキさん(さん付けであることから程度を察して頂きたい)の
    「また守れなかった」というセリフや
    七生の「ニヤリ」は相当な衝撃力を持つ。
    裏返りの生態については是非アニメーションで
    どういったモノなのか体験して頂きたい。
    

5-5 OPEDの変遷

    本編だけでなくOPEDの変遷においても
    様々な出来事があり、視聴者達を惹きつけた。
    キスダムを語る上では欠かせない要素である。
    混沌に満ちた本編の状況とは裏腹に
    どの曲も素晴らしいもので、
    かえってそれが混沌具合に拍車をかけてもいた。
    
    第一節 ED『時空を超えて』
    EDというか実際のOPがEDで流れる。
    こうした演出はままあり、別段おかしなところはない。
    
    第二節〜 OP『時空を超えて』 ED『君がいる限り』
    両曲とも本当に素晴らしい歌曲である。
    しかしOPはやたらメカに力入れているのと本編MAD具合が
    一部でネタにされることになる。
    EDは壮大というか比較的暗い作品世界観とは方向が異なるというかで
    「いい最終回だった」と
    一部で毎回のようにネタにされることになる。
    
    第十五節〜
    OP映像はこれまでも少しずつ修正されてきたが、
    このあたりで本格的に本編MADはでない
    「OP用映像」に改められる。
    本編で見せ場の殆ど無い河森メカに代わり
    主要人物らに焦点が移る、
    「NIDF隊員が一列で並び敬礼する」という
    なんらおかしくないカットでも笑いが込み上げてくるなど
    なかなかの出来栄えである。
    2クール目に突入したからといって
    別段OPED曲が変わるわけではない。
    視聴者達も「まぁしょうがないよね」と割り切っていた。
    
    第十七節〜
    OPが完成版となる。
    変更内容は更に多少の映像修正が入るとともに、
    派手なSEが付くという時代錯誤的ともとれる
    演出が導入され、視聴者達を魅了した。
    この「SE付き」という要素は
    「いかにもキスダムらしい」と言えるもので、
    一部で後々ネタにされることになる。
    
    第十九節〜 ED『because of you』
    歌手ステファニーの広い音域を活かした名曲。
    混沌度ますます深まる本編との対比や
    素晴らしいED背景絵も相まって、
    これまでと同様に「いい最終回だった」と
    一部で毎回のようにネタにされることになる。
    
    第二十二節〜 OP『A Runner at Daybreak』
    この終盤に来てまさかの曲変更。
    しかも凄まじいまでの本編総集編MAD具合になり
    視聴者達の度肝を抜いた。
    
    第二十五節〜 OP『時空を超えて The Second Chapter』
    なんと三節だけで上記の曲から
    (The Second Chapterになっているとはいえ)映像とともに戻る。
    これまでの出来事で何度も驚いてきた視聴者達だったが、
    これには面食らったことだろう。
    

5-6 「由乃オオオオオオオオオオオオオ!!!」「失格」

    作品の代名詞となる短いフレーズが存在するのも
    キスダムが愛されている理由の一つだ。
    裏番組に『デスノート』があったにもかかわらず
    実況アニメとして視聴率を競い合っていただけあり、
    こうしたフレーズはキスダムについての
    コンセンサスを促進した。
    
    「由乃オオ(ry」
    哀羽さんの行動原理は徹頭徹尾
    「愛する恋人を取り戻すため」である。
    そのためか、とにかく「由乃オ(ry」と
    叫んでいた印象が強すぎる。
    
    「失格」
    妖精さん達の口癖と行っても過言ではない。
    事あるごとに哀羽さんをこう評しており、
    とにかく記憶に残る。
    否定的な言葉にもかかわらず
    視聴者達は愛をこめて使われるという
    二律背反が独特の使用感を与える。
    

5-7 にもかかわらず、いい話なのだ

    こうして様々な形で視聴者達の予想を
    上回る、というか裏切る展開を
    繰り広げてきたキスダムだが、
    熱狂的なファンが多い最大のポイントは
    「ここまでアニメとして外法なのに
     物語は最初から最後まで王道だった」
    という点にあるだろう。
    ばら蒔かれていた伏線は回収し、
    キチンと風呂敷を畳み、
    登場人物達が見せ場で活躍しながら
    人類と世界を救ったのだ。
    ネクロダイバーも由乃への愛を貫き通した。
    最終回はまさに「いい最終回だった」。
    色々なことがあったが
    「半年観続けてきて良かったなぁ」
    と思えるほどの作品であったのだ。
    稀代の迷作でもあり、立派な名作でもある。
    そうした矛盾を包含してしまえるからこそ、
    人々の心を惹きつけて止まないのかもしれない。
    

6 最後に

 他にもキスダムについては
 「毎回必ずと言っていいほど人が死ぬ」
 「カオス溢れる2007年アニメ全体での位置付け」
 「いまどき必殺技名を叫ぶ主人公」
 「イエラの死亡フラグクラッシャーっぷり」
 「ライブ感溢れる作画」
 「タンク」
 「キスダムとは結局どういう意味なのか」
 「長岡メモ」
 「公式キャストインタビュー ビフォー・アフター」
 「Rの存在」
 など語り尽くせない程の魅力的要素が備わっている。
 このように、とにかくエネルギー溢れる
 この作品を観てみたいと思った人は
 是非四月からのBS11での再放送を楽しみに待っていて欲しい。
 またバンダイチャンネルなど
 アニメ配信サイトではお金を払えば
 すぐにでも観ることが出来る。
 そして一緒にBDを買ってくれれば幸いだ。