漫画家の技量が十分あれば誰もルールを知らない架空のゲームを題材にした作品を描いても人気が出るのではないだろうか?

 1354文字

1 はじめに

 いやぁ、咲おもしろいですね。(挨拶)
 
 と、ここで個人的に気になる話が。
 麻雀をかけらも知らない俺は『咲』をどう読んでいるか? - 水星さん家
 
 どうやら麻雀を知らない人でも咲は楽しめるらしい!
 どうやら能力バトルといった視点でも
 十分楽しまれているようだ。

2 ということは

 これを元に考えを膨らませると
 次のことが言えるのでは。
 
 漫画家の技量が十分にあれば、
 世界中でルールを把握しているのが
 作者だけという架空のゲームを
 主題においても十分な人気を得られる
 かもしれない。

3 詳しく

 例として「チャンカン」を。
 ルールを知らない人も
 麻雀で「あがる」には
 ・自分であがり牌をツモる
 ・誰かの捨て牌でロンする
 の二通りの方法があるとは
 気付いていたのではないかと。
 しかし加治木さんが
 「チャンカン」したのは
 上二つとは違う「加カン」の
 タイミングだったので
 少し混乱した人も
 居たのではないでしょうか。
 
 ルール周りに興味ない人でも
 咲の「リンシャンカイホウ」が
 阻止された事は十分に
 分かる演出となっていました。
 今までそんなことは皆無でしたので
 新たなルールとして明示された訳です。
 このようにルールが
 ブラックボックス化されていても
 咲は十分に楽まれています。
 
 では、全ての読者にとって
 ルールがブラックボックス化された状態でも
 面白い漫画は描けるのではないだろうか?
 今までよりも更に不透明なルールを敷いても
 全くとは言えないにしても問題ないのではないか?

4 だとすると

 以下のような事態が発生します。
 
 「登場人物たちが何をしているのか
  殆ど分からないにも関わらず
  読んでいて面白さを感じる」
 
 少なくとも個人的には
 ポルナレフ状態を楽しめると同時に
 以下の点で非常に興味深いことに。
 
 ・ゲームという舞台装置による拘束が
  非常に少なくなるのでは?
 ・それだけ漫画の持つ可能性が
  広がるのではないだろうか?
 ・そんな事をしてどこまで
  面白い作品ができるのか?
 
 これらへの答えがどうなるのか、
 とても気になります。

5 難点

 先の例の中で
 「チャンカン」に少し混乱した人も
 「これはそういうルールなんだ」と
 すぐに判断できたかと思います。
 それは
 「実在する競技である麻雀で
  オリジナルルールを入れるとは
  この漫画の性質からは考えられない。
  すると、このチャンカンというのも
  ルールとして正しいはずだ」
 という認識が働くからでしょう。
 
 これが架空のゲームでは
 そう簡単にはいきません。
 「ご都合主義、後出しじゃないか」
 と思われる可能性があります。
 
 「これはそういうものなんだ」
 という認識を持たれる事が
 非常に大切なのです。
 架空のゲームでは
 説得力のあるルール作りと共に
 これが一番の障害になるのでは。
 
 そうした作品の雰囲気を得るには
 相当の技量が作者に
 要求されるはずです。

6 おわりに

 この案件にそこまで労力を
 かける価値があるのかと
 問われればそれは無いと応えます。
 
 多くの愛好家がいるだけあって
 麻雀のルールは巧くできています。
 そのため麻雀は競技としての完成度が高く
 それによりルールを知らない人でも
 咲の展開が楽しめるのだと思います。
 
 それに匹敵するものを生み出すのは
 非常に困難を極めると予想されます。
 この先そんなことをする作品が
 出てくるとはあまり思えません。
 
 個人的には非常に読んでみたいのですけどね。